矛盾:contradiction  Case/Hitoshi&Haruka

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  「……え、あっ、のっ」  笑い飛ばされるつもりでやったんだけど、陽香はリクライニングチェアに張り付くようにして、あっと言う間に頬を赤く染めた。  その顔を見て、俺の方がぱちぱち……と何度も瞬きをしてしまう。  陽香は俺を見下ろし、そして慌てて視線をそらした。 「に、似合いすぎて、怖い……」 「……何それ?」  陽香は「あー」と妙な声を出しながら、顔を隠そうとする。 「あの、最近、何年か、その手の本とか、流行ってたじゃない?」 「うん? 好きなの? そういうの」  そのままの体勢で、素で訊いてしまった。 「あの、うん。好き。ドラマとかより、どっちかって言うと、本の方が……」  さすが書店員、と言うべきか。  俺は照れて縮こまる陽香をじっと見ながら、胸の中に変な感情が湧いてくるのを感じた。  ……どうしよう。虐めたい……。  いつもならちゃんと自制が働くところだと思う。  だけどここは俺の部屋で、仕事なんか終えてしまって、おまけに空腹でストレスも多少。  ──いいかな? たまには……。 「……え? あの、仁志くん……?」  リクライニングチェアに座る陽香を、さっきと同じように肘置きに手をついて閉じ込める。  でも、さっきみたいに覗き込むだけ、なんて可愛いことはしない。  素早くネクタイをほどき、羞恥で判断力をなくした陽香の手首をまとめ、括りつける。 「え? え? ええっ!?」 「じっとして」 .
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