監察日誌:悲劇の行方

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***  警察病院に向かう道中、お互い何も話せなかった。  それでも山上のことをきちんと伝えなければと、運転しながら考えた俺は、重い口をやっと開いた。 「水野くん、達哉は最期まで頑張ったそうだ……」  その台詞に水野くんは口元に手を当てて、不思議そうに首を傾げる。 「君が届けるために、頑張って走っただろう? 達哉も同じ頃、頑張っていたんだよ。だから……一緒に、労って、やろうな……」  考え付いた言葉を、やっと言い伝えた。泣かないように耐えたが、鼻声になってしまった語尾に、水野くんは何も言わず、ただ俯いていた。  悲壮感漂う車内に、ベートーベンのピアノソナタが流れる。その旋律が、今は無性に胸に響く――  その後、無言のまま俺と水野くんは並んで、警察病院にある霊安室に向かった。  扉をノックすると、中から林田さんが顔を出す。取り乱した姿の俺と、クタクタに疲れきった水野くんを見て、丁寧に一礼してから中に促してくれた。 「山上の、立派な最期……見てやってくれ……」  目頭に手を当てて半泣きしながら、林田さんは言う。  山上の顔にかけられている白い布を外し、じっと顔を見つめた。水野くんを守りきって満足したのか、どこか微笑んでいるように見える。 (達哉……お前がいなくなった後、誰が水野くんを守るというんだ。死んでしまったら、それで終いなんだぞ! 俺以上に、バカなヤツだよ――)  唇を噛みしめながら合掌し、さっさと向きを変えて出口に向かった。 「関さん……」  水野くんが呟くように、俺を呼ぶ。  胸にこみ上げる気持ちがおさまらず、右側の壁を拳でガンと殴りつけた。 「これから俺は……署に戻って山上が残した資料を元に、容疑者すべての洗い出しをする。悪いが失礼させてもらうよ」  真っ直ぐ前を見据えたまま言い放ち、決意を新たに足早に歩いた。山上の残した仕事を、完璧に遂行しようと――
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