変化の予感

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そんな俺の日常が、崩れる音がした。 コンコン、 ドアをノックする音を耳が拾う。 「…………だれ。」 俺の部屋に訪れる人なんて、 限られているのだけれど。 「俺。入ってい?」 「なんでだよ、」 「話があーんの。開けんぞ?」 ガチャ、 そう言って入ってきたのは兄である鈴太。 「ぅわ、電気つけろよ軋樹。」 「るせぇ、寝てたんだよ。」 「…………………軋樹。」 「?なに、」 「そろそろ学校行く気ねぇか?」 「は?意味わかんねぇ、」 またか。 ここ最近 俺の部屋に来ては学校に行けという鈴太。 何度言われても俺の気持ちは変わらないのに。 だりーから早く諦めてほしい。 「お前だってこのままじゃダメだってわかってんだろ?」 「嫌。外出たらまた絡まれてうぜーし。めんどくせぇ、」 「あほ、駄々こねんなガキじゃねーんだから。」 「んだと、…………」 「せーちゃんが会いたがってんぞ。」 「!!!…………桃が、」 卑怯だ。桃の名前を出すなんて。 中学卒業と同時に引きこもった俺は、 同時に桃と会うことも絶った。 だって、会ってしまえばきっと、 離れられなくなってしまう。 「せーちゃんに会うだけでいいから、頼むよ。」 「…………」 会っちゃダメだ、 脳が煩いくらい警鐘を鳴らすのに、 「桃が会いたがってる」 この言葉だけが俺の心を支配した。
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