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新しくできた可愛らしい友達の背中を、笑顔で見つめる私。
「いつも、ここでしかしないんだな――その顔」
先生が、囁くような小さな声で呟きを落とした。
「はい?…何ですか?」
姿を消していく二人に気を取られていた私は、その声が上手く聞き取れず眉を上げた。
「いや…何でも無い。子どもが好きなのか?」
先生は、綺麗な青空が透き通る、大きな窓ガラスに背中をつけ私に視線を向ける。
「あ…はい。実家に帰ると、姪っ子と甥っ子の相手をするので慣れてるんです。小さい子と遊ぶの」
あんな事がある前は、もっと頻回に帰ってたから…。
そう、心の内に苦笑いをして静かに椅子に座った。
「実家はどこ?」
「長野県です」
「そう。今住んでるのは?あのコンビニの近く?」
「えっ?…はい、あそこから自転車で5分くらいのとこです」
「茶屋ヶ坂?自由ヶ丘?」
ガラスにもたれ掛り腕くみしながら、淡々とした口調でプライベートな内容の問いを連ねる先生。
なっ、何なの?この質問攻めは!
「…茶屋ヶ坂の方ですけど。何故聞くんですか?」
威嚇にも似た、いつも病棟で発する先生のオーラを浴びながら、私は遠慮がちな声を漏らす。
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