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「あなたにとって微々たる時給でも、欲しいものを手に入れるためには必要なお金なんです」
「欲しいものって、ブランドのバッグとか?」
ブランドのバッグ?――そんなの、興味持ってる余裕なんて無い。
女の子が欲しいものって、みんなが高価なブランド品だと思ってるの?
…仕方ないわよね。女の子にとって、あなた自身が高価なブランド品なんだから。
私が本当に欲しいものは…
「そうですよ?独身の女がお金使って欲しいものって言ったら、お洒落のためのグッチとかヴィトンとかシャネルのバッグや、服に決まってるじゃないですか~」
わざとらしいほどの満面の笑みを作って見せた。
「…君は、そんな風には見えないけど」
先生は私をジッと見つめた後、目を細めてフッと静かに笑った。
「それ…どう言う意味ですか?」
私が、みすぼらしいって言いたいの?ブランド品なんて、私に似合わないって…
私を見下ろす先生の視線が、私の存在までも見下しているような感覚に襲われた。
まただ――これは、被害妄想?……抜け出したいのに、抜け出せない。
膝の上に乗せた拳が、微かに震える。
――胸が苦しい。
「…安藤さん、君は僕に似てるね。ずっと前から、そんな気がしてた」
私に真っ直ぐな瞳を向けたまま、先生はそう言った。
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