第4話 【屋上のひだまり】

3/16
前へ
/16ページ
次へ
「おい、麻弥。またこんなとこで一人で弁当食ってんのか?」 お弁当箱の中身が全て胃に納まった頃、背後から高いトーンの声が聞こえた。 「なんだ、海斗くんか。いいでしょ~この場所が好きなんだから」 私は振り返り声の主を確認すると、「べーっ」っと軽く舌を出した。 「誰か一緒に食べてくれないのか?早く友達作れよ」 「何度も言うようだけど、友達がいないから一人でいるんじゃないの!食堂で食べるよりこっちのが節約できるからなの!」 「ふ~ん。貧しいって可哀想だな」 男の子は小生意気な笑みを浮かべながら、私が座る長椅子の隣に跳ねる様に飛び乗った。 ツンツン頭で勝気な表情、おまけに口の悪い『ガキ大将』と言う呼び名がよく似合うこの少年は、小児科病棟に入院している戸田 海斗(トダ カイト)くん 10歳。 先天性の心臓疾患があるらしく、頻拍発作を起こす度に入退院を繰り返している。 初めて出会ったのは三年前。私がこうしてランチをしている時、ペットボトルの蓋が硬いから開けて欲しいと、彼の方から話しかけて来たのが切っ掛けで仲良くなった。 年上のお姉さまに生意気な口を利かない、まだ可愛らしい面影が残っていた頃の話だ。 「これも何度も言うけどさ、貧しいって言い方しないでよね」 貧乏と言われるより虚しいっつーの! 空っぽになったお弁当箱をハンカチで包みながら、フンっと鼻を鳴らした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1198人が本棚に入れています
本棚に追加