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「おい、麻弥。またこんなとこで一人で弁当食ってんのか?」
お弁当箱の中身が全て胃に納まった頃、背後から高いトーンの声が聞こえた。
「なんだ、海斗くんか。いいでしょ~この場所が好きなんだから」
私は振り返り声の主を確認すると、「べーっ」っと軽く舌を出した。
「誰か一緒に食べてくれないのか?早く友達作れよ」
「何度も言うようだけど、友達がいないから一人でいるんじゃないの!食堂で食べるよりこっちのが節約できるからなの!」
「ふ~ん。貧しいって可哀想だな」
男の子は小生意気な笑みを浮かべながら、私が座る長椅子の隣に跳ねる様に飛び乗った。
ツンツン頭で勝気な表情、おまけに口の悪い『ガキ大将』と言う呼び名がよく似合うこの少年は、小児科病棟に入院している戸田 海斗(トダ カイト)くん 10歳。
先天性の心臓疾患があるらしく、頻拍発作を起こす度に入退院を繰り返している。
初めて出会ったのは三年前。私がこうしてランチをしている時、ペットボトルの蓋が硬いから開けて欲しいと、彼の方から話しかけて来たのが切っ掛けで仲良くなった。
年上のお姉さまに生意気な口を利かない、まだ可愛らしい面影が残っていた頃の話だ。
「これも何度も言うけどさ、貧しいって言い方しないでよね」
貧乏と言われるより虚しいっつーの!
空っぽになったお弁当箱をハンカチで包みながら、フンっと鼻を鳴らした。
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