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「あ、そう言えば。今日か明日に退院って言ってなかった?」
綺麗に包んだ箱を隣に置き、偉そうにドスンと椅子に座る海斗くんの横顔を見る。
「うん。明日の午前中に帰る」
「そう。今回は早く帰れて良かったじゃない。私も、明日から邪魔されずに静かなお昼休みが過ごせるわ~」
少年の顔を覗き込み、冗談の意味を込め「イヒヒ」とわざとらしく笑って見せた。
「そんなこと言うとプレゼントやんないぞ!せっかく持って来てやったのに…」
海斗くんは眉を寄せ、頬を膨らませながらあからさまに拗ねる。
「え?プレゼント?」
「誕生日プレゼント!麻弥、昨日が誕生日だろ?」
「えっ!?覚えててくれたの!?」
「…うん。これ、やるよ」
少し恥ずかしそうにそう言って、海斗くんはパジャマのポケットから何かを取り出し、私に手のひらを向けた。
小さな手のひらに乗っているのは、台形の洋菓子が二つ。
「これ、フィナンシェ?私にくれるの?」
「…うん。おまえ、男いなくて誰からも貰えなくて可哀想だから。俺がプレゼントやる」
海斗くんは、「ほら!早く受け取れよ!」と言いたげに、視線を逸らしながら手のひらで急かす。
ありゃ?もしかして、照れちゃってる?呼び捨てするわおまえとか言うわで、いつも憎ったらしいけど…愛い奴め。
「ありがとう。嬉しい」
小さなボーイフレンドに満面の笑みを返す。
窓から差し込む柔らかな陽射しの様に、胸がほっこりとした温かい気持ちになった。
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