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「そうだ、今日は麻弥に会いたいって女の子連れて来たんだ。歯を磨いてから来るって言ってたんだけど」
海斗くんは照れ隠しをするかのように椅子の上でくるりと向きを変え、エレベーターの方に視線を飛ばす。
「私に会いたい女の子?」
「うん。先週入院してきた子なんだけど、麻弥の話をしたら折り紙を…あっ!来た来た!おーい!こっちこっちー!!」
丸いテーブルが幾つも並ぶ面会フロアに向かって、海斗くんが大きく手を振る。談話している大人たちの間から姿を現したのは、胸もとにピンクのリボンが付いた可愛らしいパジャマを着たショートカットの女の子。
その上にはリラックマの絵柄のガウンをはおり、両手で何やら大切そうに箱を抱えている。
「あの子が私に会いたいって?どうして?」
ニコニコと嬉しそうな笑みを放ち、こちらに小走りでやって来る幼い女の子を見つめ、問う。
「ずっと前に、麻弥が入院してる女の子達に折り紙教えてあげただろ?その事をあの子に話したら、自分も教えて貰いたいって言うからさ。折り紙が好きで、いつも病室で折ってるんだぜ」
「へ~、そうなんだ」
私達の座る椅子の手前で歩みを止めた少女は、恥ずかしそうに足をもじもじとさせながら、上目使いで私を見る。
「こんにちは、初めまして。お姉ちゃんの名前は麻弥だよ。あなたのお名前は?」
私はお尻の位置をずらし、小さな少女が座れるスペースを空けニッコリと微笑む。
「さいとうみき、6さいです!」
「斉藤美紀、美紀ちゃんかあ。可愛い名前だねっ」
私の顔を見つめ、少女は再び笑顔の花を咲かせると、私の隣にちょこんと座り大事そうに抱えていた箱を開けた。
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