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「当たっても痛くないよ。紙なんだから」
悪ガキはしれっとした顔で私の言葉をかわし、空気を裂いて飛行するそれを追いかけて行く。
なんつー奴じゃ!さっきの『愛い奴』は、撤回!撤回!
「こらーっ!ここを走るんじゃないの!」
いくら退院が決まったからって、走って大丈夫なの?!心臓病なのに。
私の心配を余所に、海斗くんは捕らえた飛行機を満足気に眺めているのが見て取れる。
「もうっ!ホントに困ったお兄ちゃんだね~」
呆れたため息を落としながら、美紀ちゃんに視線を落とした。
すると、美紀ちゃんの視線は海斗くんでも私でもなく、椅子の後ろ側にある階段に向かって伸びていた。
「やさしい、おおきなせんせいだ」
美紀ちゃんはそう声を漏らし、パッと明るい笑顔を見せた。
んん?優しい、大きな先生?
私は、少女の視線を追い体を捻った。
「こんにちは。楽しそうだね」
微笑みながら、こちらに近づいて来る白衣姿。
「なっ!?高瀬せんせ…」
「こんにちは!いまね、おねえちゃんにペンギンさんつくってもらったのー」
私の裏返った声を遮って、美紀ちゃんが嬉しそうに声を弾ませた。
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