第4話 【屋上のひだまり】

7/16
1193人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「当たっても痛くないよ。紙なんだから」 悪ガキはしれっとした顔で私の言葉をかわし、空気を裂いて飛行するそれを追いかけて行く。 なんつー奴じゃ!さっきの『愛い奴』は、撤回!撤回! 「こらーっ!ここを走るんじゃないの!」 いくら退院が決まったからって、走って大丈夫なの?!心臓病なのに。 私の心配を余所に、海斗くんは捕らえた飛行機を満足気に眺めているのが見て取れる。 「もうっ!ホントに困ったお兄ちゃんだね~」 呆れたため息を落としながら、美紀ちゃんに視線を落とした。 すると、美紀ちゃんの視線は海斗くんでも私でもなく、椅子の後ろ側にある階段に向かって伸びていた。 「やさしい、おおきなせんせいだ」 美紀ちゃんはそう声を漏らし、パッと明るい笑顔を見せた。 んん?優しい、大きな先生? 私は、少女の視線を追い体を捻った。 「こんにちは。楽しそうだね」 微笑みながら、こちらに近づいて来る白衣姿。 「なっ!?高瀬せんせ…」 「こんにちは!いまね、おねえちゃんにペンギンさんつくってもらったのー」 私の裏返った声を遮って、美紀ちゃんが嬉しそうに声を弾ませた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!