エピローグ

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桜の花が咲いた。三月。花吹雪の中一人みんなの輪を離れ校庭を眺める。 あれから2年とちょっと経って、私は高校卒業の日を迎えた。 死よりも怖いものができた。存在そのものがなくなるということ。 あの一連の出来事のあと日常生活に戻ると、先輩やミキ、森田君のことを知る人は誰もいなかった。みんなの記憶から彼らに関することがすっぽりぬけていた。 自問する。私だけが見た幻だったのか?私はおかしいのか、と。 でも、胸にゆらぐ青い光が真実だと告げている。ミキのくれた青い塊。 人がそこにいること、存在すること。それら全てが当たり前だと思っていた。例え命がつきても何か痕跡が残るのが普通だと。 私以外、誰一人覚えていないのだ。誰一人。 足がすくむような感覚。だれとも分かちあえない喪失感。 けれど、私は生きている。生かされている。 喪失感をかかえつつもありふれた毎日を繰り返す。 ただ繰り返すということは積み重なると大きい。 いつのまにか柔軟に現実に適応し、それなりに楽しい高校生活を過ごすことができた。 だけど、毎日の積み重ねが彼らを遠くしていく。彼らが遠くなっていく。 それは悲しいことだけど、生きてくってそういうことなんだ、きっと。 なのに、あさひに対する渇望は日を増すごとにつのっていく。 あさひ。 会いたい。 会いたい。
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