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「りさ、私たち帰るけど、まだそこにいる?」
同じグループの子達が声をかけてくれた。
「うん。もうちょっと、ここにいたいから。ありがとう、また。」
「またね。」
卒業生と在校生。式を終えてみなまばらに去っていく。桜に見送られて。
校庭を眺める。先輩も森田くんもミキもいた。ここにいた!
自然と涙がこぼれる。誰もいなくなった校庭の片隅で私は静かに泣いた。泣くのはこれで最後にしようと誓いながら。
「さよなら。」
私はつぶやくと、校庭に背を向けた。と、同時に突風がふく。無数の花びらが吹き荒れる。ドラマチックに視界が花びらに閉ざされた。なんて、ピンク色。
その時、私を待っている人がみえた。
ああ、どうして気がつかなかったのだろう。
彼はずっと私のそばにいてくれた。きっと呼べば振り返る。
そして、あの不思議な瞳で私をみつめるのだ。
「あさひ!」
私の声に、今日はスーツ姿の後藤田先生が振り返った。
ああ、やっと会えた!
End
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