第一章 ー なる ー

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「ちったん~! 今日もご機嫌悪いですね~♪」 変な声で、お嬢さんに一言かけるバカ鳴。 「飯作ったぞ? ったく、しょーもない! 自炊しろ! 彼女早く作れ!」 「あっ、ごめん! すぐ帰るから!」 いつもはヘラヘラ笑って上がり込むあいつが、この日に限って玄関先に立ったままだ。 お嬢さんも呆れたのか、廊下で座り込んでしまう。 もうすぐ11月だ、玄関で立ち話も少々寒い。 「寒いんだけど。もう飯作ったし、早くしろよ。」 「いや、ほんとに今日はいいんだ。」 なんとなくあいつの目が泳いでいる。 なんだってんだ? まったく。 「ゲームの話かと思ったけど、違うのか?」 「あ…うん、違うちがう! ん~…。」 「ん? これから仕事の残りやんなきゃだからさ、じゃ早くしてくれよ? 企画書残ってんの。」
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