第八集 「食と共にある二つの話」

第一話 大衆食堂にて

別に、おどろおどろしい話じゃないんですよ。

首のない侍が出たとか、血塗れの女に追いかけられたとか、そうい
う話じゃないんです。

本当に些細な話なんですが、それでもよければ聞いてください。

私は去年まで、そこの商店街で食堂をやってたんですよ。

最初は妻と二人で切り盛りしてたんですが、あいつが亡くなってか
らは、一人でやってました。

あの通り、今はだいぶ閑散としていて、「シャッター通り」なんて
言われてますが、私はあそこが賑わってた時からいましてね。

八百屋に魚屋、和菓子、寿司屋もありましたねえ。