第一話 大衆食堂にて

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いっつも昼頃は通りが人でいっぱいになって、自転車を走らせる隙 間もなかったのに、変わったもんです。 一番盛り上がっていた時期を知る人間としては、寂しいですよ。 私の店もその頃と比べて、ぜんぜんお客さんが来なくなっちゃっ て、かき入れ時ですら、7、8人くればいい方。 こんなんじゃやっていけませんで。 おまけに、店のあちこちにガタがきてる。のれんは文字が見えない ぐらい擦り切れていて、「めしや」の文字しか読めない。 看板は壊れてるんで、もう店先に出してない。 知らない人が見たらつぶれた店にしか見えないけど、直そうにも金 がない。 こりゃあもうダメだなって、閉めさせてもらったんです。
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