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第1話
「安祐美は男性にとって、かなり『都合の良い女』だよね。」
友人 芽衣子の唐突な言葉に、安祐美はお茶を噴き出した。
「同感。安祐美は男に優しすぎる。」
そう言って頷く友人 伊代に、安祐美は苦い顔をした。
安祐美、芽衣子、伊代は S高校に通う女子高生だ。
3人は始業式を終え、
駅前のファミレスに集っていた。
「そ、そんな事ない!ただ...好きだから色々許しちゃうだけ!」
安祐美には一つ年上の彼氏がいる。
同じ高校で、ややチャラめな彼に
校内の渡り廊下で声をかけられ、
流れで付き合うことになった。
「乃木先輩...だっけ?あの人、学校で良い噂全然聞かないよ。元カノには浮気がバレて振られたらしいしー。」
不満そうに呟く芽衣子に
安祐美は頬を膨らませた。
伊代は黙々と苺パフェを
平らげていく。
「大丈夫だもん!先輩はそんな事しないって私は信じてるから!」
安祐美の瞳は、明日を見据え
キラキラと輝いている。
翌日ー
駅で待ち合わせした芽衣子、伊代と
共に高校へと向かった。
「あ!クラス表張り出してる!
ほら二人とも!急いで!」
「あ。みんな一緒。」
「あったー!やったー!」
芽安祐美の声に、周囲の学生が振り向き、芽衣子は恥ずかしさのあまり、安祐美の口を抑え、教室へと向かった。
「2-1...ここか。」
教室内を見回すと、去年も同じクラスだった子がチラホラと見受けられた。
時計は9時をまわり、教室の扉が開いた。
「みんな、席につけー」
教卓に立った担任教師に、去年の顔ぶれは口角を緩めた。
「潮ちゃんじゃーん!」
「今年も潮ちゃんのクラスかよ~」
「潮ちゃ~ん、今年もよろしくね~」
あちこちから彼を歓迎する声が湧き上がり、途端にクラスの雰囲気は穏やかになった。
「こら、静かにしなさい。まったく...なんで俺の受けもつクラスって、こうも毎年騒がしいんだ...。」
潮ちゃんこと 潮 幸正先生は、生徒達に絶大な人気を誇っている。本人は気づいていないが、生徒一人一人に、分け隔てなく優しく、叱る時にはきちんと叱ってくれる先生が、皆は大好きなのである。
「さっそくなんだが、5月に行われる遠足のしおりを束ねる作業を、誰か引き受けてくれる者ー」
その一言で再び静まり返った教室で、先生は必死に人員を探した。
「...よし!じゃあ名前順で...四十住(あいずみ)と和泉(いずみ)!申し訳ないが、任されてくれ!」
「四十住...って...え、私?」
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