始まり

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寒くなってきた私は障子を閉め、再び部屋に引っ込む。私にあてがわれたのは一番日当たりの良い部屋で八畳間、違い棚付き。 この家で一番いい部屋な気がする。 あまりの丁重な扱いに逆に恐縮してしまう。 母の家は資産家で、この大きな家も叔父さんが親から譲り受けたそうだ。 平屋の、純粋なる日本家屋、という感じ。廊下を歩くとギシギシと板がきしむ音がし、相当年季が入っているのがわかる。 「千尋ちゃん、ご飯できたよ」 その声に、はーいと返事をして居間へ入る。私の部屋は居間と続いており、襖を開ければすぐに移動できるのだ。 丸い食卓、いわゆる『ちゃぶ台』というやつだろうか。その上にはもう朝食の支度がなされている。 ご飯、味噌汁、ひじき、焼き魚。今日もお店で出てくるみたいに美しく盛り付けられていて、つい関心してしまう。
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