始まり

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「よく寝れてる?この家には慣れた?」 「はいっ」 あの夢のせいで寝覚めすっきりとは到底言いがたいが、言うのがはばかられる内容なので黙っておく。 そのまま俯いてもそもそと食べていると、会話が止まってしまった。 気まずさにちらりと彼を見上げると、何でもない風に味噌汁をすすっている。 気まずさを感じていたのは私だけだったようだ。いまだに彼との接し方や距離感が掴めないままだった。 結局そのまま食べ終わり、学校へ行こうと玄関へ向かった。 「今日も帰りはいつもと同じくらい?」 「そうです」 「また何かあったら連絡してね。」 「はい!」 行ってらっしゃい、と見送られ、軽く頭を下げて戸を開ける。 この家は本当に立派で、玄関を出てから門をくぐると外に出られる。 お母さんは私を養うために働いていたから、「行ってらっしゃい」なんて言われたの初めてかもしれない。少しくすぐったい気持ちで坂道を下った。
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