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「ああ、あんたもかい。結局、その箱を見つけた人間は開けずにはいられないんだ」
女は残念そうにそう言ったが、やはり動かすのは口だけで、男から箱を取り上げたりするようなことはしなかった。
男は、震える手で箱の蓋を開ける。蓋は、意外にも簡単に開けることができた。
恐る恐る中を覗いてみると、なんと箱の中は空ではないか! また、箱を開けることによって、毒のついたトゲがでてくるような仕掛けもないようだ。
いったい、どういうことだろうか? そもそも、空っぽなのになぜ『びっくり箱』なのか。もしかして、この箱は自分が追い続けた呪いのびっくり箱ではないのだろうか?
そう思いを巡らせた次の瞬間、何かに気がついたかのように、男はハッと女のほうを見た。
男の目はカッと見開かれており、その表情は恐怖に支配されている。
「ひっ……」
声にならない短い悲鳴をあげ、目玉がぐるりとひっくり返ったかと思うと、男はそのまま崩れ落ち、そして息絶えた。
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