びっくり箱

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これで何人目だろうか? 女がこの場所に立って数百年。何人もの人間がここを訪れ、びっくり箱を開けようとしてきた。 その度に思いとどまるように声をかけてきたのだが、誰一人として女の忠告に耳を傾けるものはいなかった。 女にはここに立つ前の記憶がなかったが、数百年も今いる場所から一歩も動けないでいることから、自分が生身の人間でないことは理解している。 もしかして、自分の声は生きている人間には届かないのではないのだろうか? いや、それどころか、自分がここにいることに、誰も気がついていないのではないだろうか? そこまで考えて、女は慌ててその考えを打ち消した。 「そんなはずはない。だって……」
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