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びっくり箱
とある場所の街はずれにある古びた館。
ほとんど廃墟の様相を呈しているにもかかわらず、なぜ未だに取り壊されていないのか。
そもそも、持ち主は誰なのか。
全てが謎に包まれたその館の一室に、男はいた。
「これが……そうなのか?」
男はそう呟きながら、部屋の片隅にあるチェストの上に置かれていたそれに手を伸ばし、その行為があまりにも不用心だったことに気がついて、慌てて手を引っ込める。
「そう。それが、開けたものは必ず死ぬ、呪いのびっくり箱よ」
チェストの横に立った女が男に向かって言った。
「しかし、どういった仕掛けでこれを開けた者は死ぬことになるのだろうか? 見たところ、普通の木箱だが……」
男は木箱に近寄り、上からや横から見てみたが、何の変哲もない木箱にしか見えない。
「さあね。私は開けたこともないし、中に何が入っているのか見たこともない。ただ、それを開けて死んでいく人間は数え切れないほど見てきたよ」
女は、心底うんざりしたように吐き出した。
ゴクリ
男はつばを飲み込み、意を決したようにその木箱に手を伸ばす。
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