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早足の俺にピッタリ付いて歩き、軽口を叩く秀を“流石だな”と見る。
「なんかオレに手伝えないか?時間作って飯食いに行こうぜ♪」
俺は必要な本のリストに目を通し、秀を改めて上から下まで見る。
運動大好きってよくわかるジャンパーにジーンズスタイル。
ここの学生にはいないであろうタイプだ。
「帰る気はないんだろう?」
「当たり前だろうがっ!せっかく横浜から来たんだぞっ!」
「わかった」
本当は一人なら資料館内でレポート作成する処だが、この賑やかしい秀がいるとなると、それは…無理だ!
「じゃあ、レポートに使う資料を俺の研究室に運ぶから手伝え」
「おう!そういう事なら任せろ!!」
しかし…任せろって胸を張った秀だったが、テーブルの上に集まった本を見て唸った。
「本当にこんなに必要なのかよ~!?」
「ああ。任せろって言ったよな!?」
わざとらしく意地悪く言ってみる。
「ったく~運びますとも!部屋はどこだ?」
それをわかってて、真っ正直に約束を守る。秀って奴はそういう男だ。
「三階だ」
「三階かよ~っっ!学校ってのは多階建てなのに、何で階段なんだろうなっ!?」
「学生時代からサボり癖を付けない為じゃないか?」
答えながら秀の手から本を5、6冊取ってやる。
「オレ、スポーツは好きだけど労働はサッサと終わらせたい方だ!!」
「誰だって同じだろ」
「同じって、じゃあ当麻は今もアーチェリーやってるのか?」
「そっちはあんまり…気持ちを落ち着けたい時にイメージトレーニングする位だな」
「何だ~相変わらず頭ばっかなんだな」
「これが性に合ってるんだよ」
「そんなん続けてたら身体壊すぞ」
「母さんみたいな事言うなっ!」
俺の苦虫を潰したような顔を見て、秀がニヤリと笑う。
「さてはお袋さんにも言われたんだな~当麻くんってば~♪って!」
「サッサと入れっ!」
話しながらで意外と早く着いた自分の研究室に秀を押し込む。
「その様子だと、お袋さんは相変わらずなんだな」
「ああ…ここには来ない様に念を押してある」
空いている机に本を置くと、秀も習って本を下ろす。
「オレだって、あのカラカラしたお袋さんの息子が当麻だって未だに信じらんないからな」
「自分でも少し思うよ。じゃあ、レポート始めるからその辺で待っててくれるか?」
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