第1話

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 ある初秋の朝、あたしは高校の制服を着て、家を出た。  あたしの名前は、深沢深雪(ふかざわ みゆき)。星霜女子高校の一年生だ。ちなみに、星霜の制服は、めっちゃ大人っぽい。紺色のブレザーがかっこよさをかもしだし、紺色の靴下が、花を添えている。校則はそこそこ厳しいが、髪型は自由なので、長いサラサラのロングストレートにして、後ろに垂らしている。定期テストや小テストもあるので、完全に自分の思い通りとはいかないけど、あたしは今の高校生活を満喫していたのだった。  さて、季節は巡り、楽しい夏休みも終わって、もう十月の衣替えの時期になった。ある肌寒い朝、およそ半年ぶりに、母が冬服のブレザーを出し、あたしは糊のきいたブレザーを着て登校した。  そして、すれ違うクラスメイトたちに「おはよう」と声をかけるが……皆が皆、あたしのことを奇異な目で見る。中には、クスクス笑っている子もいる。あたしは怪訝に思いながらも、始業ベルが鳴るまで時間がないので、校舎への道を急ぐ。  しかし、教室に入ると、友達が、「ちょっと、深雪……ブレザーの裏地……」と言うので、ブレザーをひっくり返してみると……なんと、裏地には、黄土色の生地がついているではないか。ちなみに、うちの高校のブレザーの裏地は、表と同様に紺色である。これで、ようやくクラスメイトたちの爆笑している原因がわかった。おそらく、おっちょこちょいの母が、父の背広を間違えて出したのだろう。道理で、サイズが大きすぎると思ったが。  やがて、始業ベルが鳴り、担任が教室に入ってくると、あたしのブレザーの裏地をゲラゲラと大笑いし始めた。しまいには、「深沢、おまえがいると授業にならんから、今日はもう帰れ」と言い出す始末……。それでも、あたしは、一日自由時間ができたと思って、ルンルン気分で帰宅した。  帰宅すると、母があたしの格好を見て、大笑いし始める。あたしはいい加減、頭にきたが、もう怒る気力も失せていたし、今日一日時間が空いたので、街へショッピングに出かけた。
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