第2話

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――――――― 「ねえねえ、なっちゃん!」 ああ、懐かしい呼び名だ。 その呼び名と、忘れたはずの高く澄んだはつらつとした声で、これが夢なのだと僕はぼんやり理解した。 僕は、公園にいた。 いつも幼馴染と遊んでた公園。 懐かしい光景、とうに忘れていたはずの公園なのに、夢はそれらを鮮明に映し出していた。 大好きなブランコ。 斜面が苦手だった大きな滑り台。 壊れかけのシーソー。 僕は瞼でシャッターを切るみたいにして、ひとつ瞬きをした。 「なっちゃんってば、聞いてる?」 ツインテールに、ピンどめであげられた前髪、好奇心に満ちた瞳。 それは、僕の幼馴染との記憶だった。 「…聞いてるよ。あいりちゃん」 今よりも幾分か高い少年の声。 声は小さく弱弱しい。 細い手足は青白くて、こんがり焼けた肌色の幼馴染―吉田愛梨ヨシダ アイリーとは酷く対照的だ。 そう、僕はどちらかというと根暗な性格で、家の中でゲームしたり本を読んだりしてる子どもだった。活発、なんてお世辞にも言えない。大人からは時たま困った表情をされる「むずかしい」部類の子どもだった。 保育園で知り合った愛梨に連れまわされるまでは。 「なっちゃんってば!!」 「なあに。聞いてるよ」 「うそつきー。今ぼーっとしてたでしょ」 ぷくっと頬を膨らませる愛梨に困った僕は、いつもここで謝ってしまう。 「…ごめん」 「えへへへ、ゆるしてあげる。 見て、なっちゃん!おっきな虹がでてるよ!」 太陽みたいにきらり、輝く笑顔の愛梨の指差す先には、大きな大きな虹があって、 でも僕は、そんな虹なんかより愛梨の笑顔に目を奪われてた。 紅潮した頬を気取られたくなくて、僕は虹を見た。 「本当だ、おっきい…」 「きれいだねえ!」
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