第2話

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こちらを見られないように、なんて考えてたのに、にこにこ虹を見てる愛梨を振り向かせたくて僕は父親に教えてもらったことを話した。 こういう話、愛梨はたぶん好きだろうし。 「あいりちゃん、知ってる?虹の根っこには宝物があるんだって」 「え!?本当に?!」 「うん、お父さんから聞いたんだ」 すっごおおおい!!なっちゃんてばなんでも知ってるんだね! なんて、言葉が返ってくるんだろうな、て期待して愛梨にちらり視線を送る。 けどそこでうまくいかないのが人生で。 愛梨は何故か真剣な顔して僕を見てた。 「じゃあさ、探検しよ?宝物、探しに行こうよ!!」 「いや、まじで…?」 思わず呟いた声は低くて、僕は顔を顰めた。 「あ?何がだよ?」 真上から大河にのぞき込まれて、夢は終わったのだと瞬時に理解した。 「……なんでもない」 「おまえ、途中で潰れたんだよ。覚えてるか?」 タクシーに乗せて、俺の家まで連れてきてやったんだ、感謝しろ。 睥睨しているであろう大河に目を向けることなく僕はひらひらと手をふった。 「ああ、てんきゅ」 ポケットの中の携帯で時刻を確認すれば、飲んだ日の翌日の11時を指していた。 「……講義面倒臭い」 「おいおい、卒業できなくても知らねえぞ」 見かけによらず面倒見が良くて、真面目な大河に諭されて渋々立ち上がる。 大学に行く準備をしなければいけない。 現実を受け止めて準備にとりかかった僕だが、思考は夢の内容へよ移されていた。 もう少しだけ、あの夢を見ていたかった気がする。 小学校3年生の時の、僕と僕の幼馴染の思い出。 確かあの後は、嫌がる僕の腕を引っ張った愛梨と「探検」に行ったんだ。 走って走って、疲れてたら歩いて。体力がない僕は息切れに苦しめられながら、たまに愛梨にはげまされながら、虹に向かい続けた。 懸命に虹の根っこまで走り続けたけど、いつの間にか虹は消えていて。 同時に日も暮れていて知らない場所にいた僕達は、警察に保護されて帰路に着いた。 両親にしこたま怒られたのは忘れられない記憶だし、歩きすぎて痛かった足の痛みは忘れてしまったけれど、もう二度と経験したくないのは確かだ。
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