予兆

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緊張が中途半端にほぐれたせいか、余計に指先の動きが鈍る。 「成田さん、これ頼んでいいかな?」 斜め向かい側から、上条さんの声がして、ハッとして顔を向けた そう言えば。いつも隣に市川さんがいたせいで、上条さんと二人きりの絡みなんてほとんど皆無だった 「はいっ」 私はウキウキして机を回り込み、隣まで受け取りに行く 「前から手渡しで良かったのに。」 「いえいえ。そんな、上条さんの為ならこんなことくらい」 嬉しくて顔が崩れているだろう、私は恥ずかしげもなくそう言った けれど。 上条さんの顔は、なんだか浮かない顔をしている。 「どうかしたんですか?」 どうしたもこうしたも言えた義理のない私が問いかける 「……いや。」 私の目をじっ、と見てから。 すぐそらされた
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