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「俺の田所ちゃん」
何を言ってんだか。
私は呆れて
「あー、そうですか」
と言い返した。
あ、そっか。思い出した。見たことあると思ったら、
あの寿司パーティーに私達以外に一人いた女性、百菱商事のキャリアウーマンだ。
「俺の彼女」
「あはは、またまたー。なにいってるんですか。」
私はいつもの馬鹿げた冗談かと思って、笑い飛ばした
「だから、彼女だって」
しつこくそう言った市川さんの顔を見て、
一瞬で血の気が引いた
――う、そ……だ。
「何の冗談ですか?」
突然すぎて、心がついていかない。
呼吸がとまって、胸がキリキリときしむ
「いいだろー?」
嬉しそうにそう言う市川さんの顔には、『冗談』だなんて文字のジの字もない。
突然、言葉が出なくなって、私は唖然とした
いつから?
いつから、付き合ってたの?
お昼休みが終わってからも、私は頭の中を整理しようとして、業務が全く手につかない。
もしかして、あの寿司パーティーのときには、既に……?
急に勝手に一人で立ち回っていた自分が滑稽に思えてきて、指先が震える
これは、哀しみなのか。怒りなのか。
振り回された、だけ……?
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