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つかず。離れず。
なかなか消えない、成田の敬語。
どういうつもりなんだか、そう話されるとまるで赤の他人でしょ、って当て付けられてるみたいな。
でもそれも、自分の不甲斐なさに対する十字架みたいで。
ちょっとでも、罪を背負わせられていないと、こんな自分の均衡を保てない
自分勝手で。周りを引っ掻き回して。
結局だれも喜ばせられないなんて、――そんなもん自分が最低最悪なのは、今更誰に言われなくってもわかってる。
そんな負い目も、成田の無邪気な笑顔を見ていたら、胸がチクリと痛むから。
もっと、堕ちて。
惨めで、いいのに。
――成田は、そんな俺には柔らかすぎる、生温い仕打ちで、俺を呼ぶ
「イチさん」
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