5060人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
成田はそんなこと言わない
勝手に心の中で、そう思いこんでいた。
自分の中にあった確かなものが粉々に崩れる。何もかも。
「疲れた。もう嫌だ」
予想してなかったその言葉は余りの衝撃で、息が詰まる。
一番手放したくなかったものが、自分の手の中から、するりと抜け落ちていく。
【嫌だ】
「わかった」
これ以上、その言葉を聞けなくて。
無様に言い訳なんかして、失望されるのが怖くて。
通話を切った。
――成田にだけは、否定されたくなかった
最初のコメントを投稿しよう!