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上条さんの声が、フィルムがかかったみたいに、どこか遠くで聞こえた。 欲しいのは、この声じゃなくて。 世間話をしているまにマンションについて。 落ち着く声に。 ときめきよりも、戸惑いの方が強くて。 昔みたいに浮き足だたない。 身体が、ダメって警告してるみたいで。 頭から、離れないのは。国見君が言っていたイチさんの言葉。 手離したのは、私で。 イチさんは、何も言ってない。 ずっと、ずっと。 それが引っ掛かってた。 遊んでも、気をまぎらわしても。 結局気が付けばその事しか頭になくって。 このまま流されて、取り返しがつかなくなったら。 そう考えると、怖くて仕方がなかった。
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