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抜け出したい。――そう思うくせに。
離れたら、どうにかなるかも。なんて、結局弱いだけだ。
でも、これで何かは、変わる。――そう、信じて。
終わる覚悟を心の奥底で感じながら、日々は過ぎていく
「悪いけど、一回戻ってきて!」
朝から外回り、午後に合流のはずだった紀井さんから連絡があって会社に戻る
通いなれた通勤路。
どこか侘しい気持ちで会社へと向かう。
天気のいい昼下がり。
足取りは軽い。
会社のビルが見えて、エントランスを抜け、エレベーターを待つ。
開いたドアにすぐさま乗り込んで、階数ボタンに指をあてた。
閉まる、ドア――
「すみません!」
閉まる、とぼんやり見ていたドアが再度開いて。
目の前に現れたのは、
――田所さん。
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