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未練がましい、と言ってしまえば。それまで。 もーいいし、別に。って強がったくせに、全然良くない。 あんなメールまで送っておいて結局はやってる事が矛盾していて。 まぁ、単純に。 成田を試して。自分が安心したいだけだ。 自販機前でたたずむ成田の後に、静かに立ち止まる。 いまだに、自分の所有物みたいな感覚。 そんでもって妙に小綺麗な成田に、苛つく。 「美紗緒」 気がつけばそう声をかけていた。 「……お。つかれサマです」 振り向きもしない成田に、もっと意地悪がしてやりたくなって。 ボタンに合わせていた指をおろして、オドオドと成田が振り返る 視線は斜め下。 やっぱり、化粧がいつもと違う 「なに。今日なんかあんの?」 「……べ、別に。」 ふてくされた成田の顔に、胃がムカムカしてくる 「あ、そ。 買うの?買わないの?」 平常心を保とうとしても、なかなか出来ない 「か、買います」 その時、やっと視線が絡まった。 血流が、――うなる その視線を直ぐに外すと、また自販機に向かい合った成田がボタンを押した ガチャンと、落っこちてきたコーヒー。チャリン、と響くコインの音。 しゃがみ込んでソレを拾い上げる成田の後ろに詰めよって間隔を縮めた 「――じゃ。」 一礼。そそくさと、その隙間を逃げるようにして足早に去ってく成田。 ほのかに香る成田の甘い香水に、ここがどこかも忘れて危うく抱きしめそうになった ヤバい。 なんで、――なんで成田じゃなきゃダメなんだ。俺。
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