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まるで余裕がない。 成田の部署の女につっこまれたクセに、相変わらず成田の姿はチェックしてしまうし、 こうやって気持ちに整理をつけようとしているんだろう成田の姿を目の当たりにすると、ガクンと落ちる自分がいて。 ――そんな簡単に忘れさせてたまるか、って意地になってる自分がいて。 自分も背広のポケットから小銭を出すと、自販機に金をつっこんだ チャリチャリン、と重なるコインの音。 「……。」 慌てていた成田が釣り銭も忘れて逃げた事に、口角がつり上がる お互い、動揺して 意識して 未練がましいのに、うまくいかない 取り出した小銭を掴むと、そのまま自分の課を通りすぎて成田の課へと向かった こんなことして、どうしようもないのがわかっていても 離れていこうとする成田の心にまだ――自分の影が見えるうちは ――それを確認して、安心したいのか。
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