4675人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ふと、絡んだ視線は、切れ長の目の女。
目で会話、じゃねーけど。物言いたげなにやついた顔。
――うぜえ。
「おい」
成田の背中に向かって、声を出した
「うしろ」
女の笑いを堪えた声。
ゆっくりと振り向いた成田が、上目遣いに俺の顔をにらんだ
「釣銭」
差し出した手に、反射的に成田が手を出した。
ほのかに薫る、甘い、香水がふわりとまとわりつく。
「あ、あり……」
「ぼやぼやしてんなよ」
「……。」
クラクラする。
その、香りに。
――この先。いつか。
コイツの存在が、俺の中から消える事なんか。――あるんだろうか。
うろたえる成田の表情に、ひとまず満足して。
――こんなんじゃ、全然。
そう思いながらも、きびすを返す。
喉の奥につっかえた何かをのみ込んで。
往生際の悪さに、また、失笑した
最初のコメントを投稿しよう!