4316人が本棚に入れています
本棚に追加
まん丸でちっさい成田の頭見て、
真後ろに立ち止まる。
その瞬間、ビクッとはねあがった成田の背中。
ゆっくり振り返った成田の上目使いの目と、
俺の目が、合う。
一瞬、時が止まったみたいに目が、――合うんだ。
いまだに、このなんともいいがたい、間。
「早く入れたら」
止まっていた時を乱暴に動かせるのは、いつも冷めた声の俺の言葉
「すっ、すいません」
成田の手にはマグカップ
マグカップの中身は、
「なにそれ」
「――もずくスープ……ですけど」
「あ、そ」
中身なんか、はなから興味なんかない
慌ててポットから湯を出してる成田の後ろ姿に
ついうっかり悪戯したくなって、手がのびる
「お待たせしました」
ふっ、と振り返って
怯えた、顔。
じゃあ、と言って小走りに給湯室を出ていった成田に。
行き場のない、数センチだけ伸びた、手。
最初のコメントを投稿しよう!