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そして成田が辞める一週間前のこと。
結局、出張続きで成田とはタイミング合わずじまい。
連絡をとろうとしても、今さらもう固まった指先は思うようには動かない。
何せか、成田に関してだけは。
もう、異常としか言いようがない。
こんな風になった事がいまだかつてないだけに、自分でもよくわからなくて。
そして、成田からの連絡も全く、ない。
夢でも見てるんだろうか、そう思っても。
終電で、接待終わりに帰宅。
電車を降りる瞬間。携帯が鳴り響く。
背広のポケットから携帯を取りだし、
ディスプレイの表示は【美紗緒】
思わず顔がほころんで、携帯を握りしめて早く駅に着かないかと久しぶりに心がおどる、――のも数秒だった
――違和感。
それは、単なる勘でしかなくて。
今までに成田がこんなしつこく電話をかけてきたこと。
――ない。
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