59人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…その、お見苦しいところを…。すみません」
少しだけ俯き、視線は俺から向かって左の方を向いている
何を見ているのか気になって同じ方向を向くと、その先に居たのはこの前平岡さんと一緒に店で見かけた女の子
店の外で、俺達の様子を窺(うかが)っていたんだろうか
俺と目が合った途端、ビクッと体を強張らせ深々とお辞儀をしたかと思うと、まるでロボットのようなぎこちない動きで街の中に姿を消した
「………あの…」
「ん?」
「す、すみません…」
「何に対して謝ってるん?」
「………」
視線を戻すことが出来ず、外を向いたままで頬杖をつき、彼女に問いかける
「怒ってはります?」
「何で?」
「その…のどか………。あ、さっきの子、中里(なかざと)のどかって言って私の友達なんですけど…」
「平岡さん」
「はいっ!」
ピッと姿勢を正すのが、視界の端に映る
ゆっくりと視線を移動させると、キュッと唇を結び戸惑った表情をした彼女が俺をジッと見ていた
「友達想いの子が居ってくれてよかったな」
俺の言葉に、ふにゃっと表情を崩す彼女
「そうなんです。今日も、朝からずっと一緒に遊んでて。ここまで心配してついて来てくれたんですよ」
恥ずかしそうに後頭部を掻いて『ヘヘっ』と笑う
「そっか。さっきの質問の答え…」
「へ?」
「怒ってるか聞いたやろ?」
「あ、はい」
「怒ってへんよ。ただ………」
笑ってたかと思った彼女の表情が曇った
俺が何を言いたいのか、雰囲気で察したようだ
最初のコメントを投稿しよう!