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「ちょお、フジ!開けてや。皆で読もや」
カップに刺さったストローを歯でかじりながら催促するのは、1年の時のクラスメイトの西田 太一(にしだ たいち)
「嫌や。そんなんあの子に失礼やろ」
俺の言葉に、ブウッと頬を膨らませる
「そんな顔しても知らんし」
斜め前に座る西田をチラッと上目遣いで見て、またすぐに視線を落とした
「それにしても、よぉおモテになるわ~。今月、何回目?」
同じバスケ部だった吉野 光(よしの ひかる)が横から、俺の手元を覗き込む
手に取ったラブレターらしきものには、表にも裏にも名前が書かれていない
シンプルなピンクの封筒の右下に、可愛らしいイチゴが3個プリントされている
「さぁ…。忘れた」
過去には、学校の外で待ってた他校の女子生徒や、部活の予選大会を見に来ていた女の人…服を買いに行った店の店員さん…等、数え上げればキリがない
ただ、ケータイの連絡先を紙に書いて渡してくることはあっても、こうやって皆で座って居る中で手紙を渡しに来たのは、久しぶりのことだ
「えーよなぁ…。カッコええと…」
「そぉか?」
ストローをかじったままカップから抜き、そのまま天井を仰ぎ見る西田に問いかけた
「そら、そーやろ!男ばっかのむっさいトコに3年間も通ってんねんで?共学とか女子校とかどんなんなんやろ…。やっぱ、ええ匂いとかすんのかな?」
椅子の背もたれに両肘を置き、ギコギコと椅子を動かす西田に皆が吹き出す
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