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「あれ?都は?」
まだ俺達が小学生だった頃
3家族で1泊2日の旅行に出掛けた時のこと―――
おばちゃんが辺りをキョロキョロ見回したことで、みやちゃんが居ないことに皆が気付いた
「えっ、嘘…。いつから居らん?」
「さっきまで一緒に居ったけど…」
大人達が騒ぎ出す
昼飯を食べ、皆で店を出た時には一緒に居ったみやちゃん
―――あそこや!
直感でどこに居るか分かった俺は、頭を抱え不安そうにブツブツ言うおばちゃんに声を掛け走りだした
「みやちゃん!」
ゴンドラ什器(じゅうき)と呼ばれるたくさんの商品が並んだ陳列棚を、端からしらみつぶしに覗き込み、大きな声で名前を呼ぶ
まだ小さい俺達にとって大人の背の高さほどの棚は、まるで巨大な壁のようだった
「しっ…慎ちゃん!!!」
俺の声を聞きつけたのか、5つほど先の棚から駆け出してきたみやちゃん
そのまま、泣きながら俺の胸に飛び込んできた
「だっ…誰も…居らんく…て…」
「うん」
「こっ…怖かっ…た」
「うん」
「怖かったよぉ~」
1人で取り残されて不安だったのに、必死で泣くのを我慢してたのか…それまで泣いた形跡もなかったみやちゃんの頬に、いくつもの涙が筋を作る
ポンポンと頭を優しく撫でると、俺の服を掴んでいた手に力がこもったのが分かった
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