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そうこう5分くらい話をしていると、
彼女がしきりに店内の様子を気にしだした。
俺もその様子が気になって、
「どうかしたの? 」
彼女にそう聞いた。
すると彼女は、
少し気まずそうに、
「中に職場の後輩がいるの」
苦々しく笑いながら答えた。
「職場? 」
「はい、実は今、勤務中なんです」
こんな所へ、私服で?
と俺が声に出さずに考えていると、
ガーッと痰を吐くみたいな音で、
目の前の自動ドアが開いた。(壊れてるのか? このドア)
出てきたのは、青いパーカーを着た高校生くらいの眼鏡くんだった。
目が緑色なところ、
おそらく日本製ではなく外国製なのだろう。
少年が俺の後ろにいる彼女に手を振る。
彼女は、俺と話していたことを取り繕うように、
さっと立ち上がり、少年に駆け寄った。
「どうだった? 」
「やっぱりビンゴ。典型的なアレだったよ」
なんだか少し真剣なやり取り。
俺は、少年の言う典型的な『アレ』がまるでわからないのもあったが、
彼女が勤務中な事も思い出し、
このままそっと立ち去ろうとした。
その方が彼女に迷惑がかからない、
そう思っての配慮だった。
しかし何を思ったのか、
「ちょっと待ってください! 」
彼女は俺を引き止めた。
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