春待ち歌

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「246番だよ、いい?間違えないでよ」 「やっぱりさ、咲が自分で見ろよ?」 「嫌だ。潤平が見て」 今日は、彼女が受けた大学の合格発表がある。 予定の時間が近づき、こうしてパソコンを開いて待っていた。 当の本人は、ベッドに腰掛け、組んだ脚をぷらぷらさせている。 少し後ろに倒した体を両手で支え、窓の外を眺めていた。 いい気なもんだ…… 「落ちてたら何て言えばいい?」 つい意地悪く、そう尋ねてしまう。 「いいよ、普通で」 外を見たままそう答える。 「普通って何だよ……」 一旦床に視線を落とし、それから僕の顔を見る。 勝ち気な子だが、その表情にはさすがに不安が見え隠れしていた。 僕が何か言うのを待っているんだろうな。そんな気はしたけど、中々言葉が見つからない。 黙っていたら、思った通り少し不満そうな顔になる。 そして先を越されてしまう。 「じゃあ、落ちてた時用に何かサインでも決めておく?」 咲がそう言った。 「どんな?」 「例えばさ……」 そこまで言うとベッドから起き、僕の所へ来る。 「やっぱり自分で見るよ。そこどいて…」
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