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椅子から降り、窓辺に立つ。
もっと2人とも、喜びに弾けていいのだけれど。
「何だろ?」
「どうした?」
「…うん」
会話が噛み合わない。
1年間必死で頑張ってきた。その結果が出たというのにお互いぎこちない。
窓に息を吹きかけ白く染めている。それが溜め息にも見えた。
「ねぇ、出掛けない?」
「外、雪だよ」
「…だよね」
咲は、僕より1つ年上だ。
これで、4月から東京の大学へ行くことが決まったわけだ。
離れ離れにはなるけれど、そのことはもう充分話してきた。
「やっぱり出掛けよう」
「雪だよ。今、自分で言ったくせに」
「そうだけどさ、冬だから雪は降るんだよ」
「何それ?」
笑顔が戻る。僕の隣に座る。僕の手を握る。
見られているのは分かっていた。だからどうしても僕も笑顔でいなくちゃいけない。
たぶん、悪いことばかりじゃないと思う。
「大丈夫そ?」
僕は1日だって君を想わない日はないだろうし、
「ゴメンな。寂しいのは同じなのに、気を使わせて」
たぶん僕は、もっともっと君のことが大切になるんだと思う。
「いいよ、私、年上だし」
もっと。きっとそう、もっと。
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