ユキトキヲク

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ユキトキヲク

ーー頭の中で、バッハのフーガ、ト短調がパイプオルガンを奏え鳴り響いている。 私がベッドで横になっていると、カーテンのすそから、少しだけ外が見えた。 窓越しには、街灯に照らされた雪達が鮮やかを強め、これ見よがしに自身の存在を主張している。 ーー世界の全てが終りへと向かえば良いのに。今直ぐに。  若葉は、眉間にしわを寄せて、あまりの不快感からそう願った。  若葉は雪を見ると、いつも狂い出しそうになる。 身体中の穴という穴から、まるでウジが湧くような感覚すら覚えてしまう。体と心は身勝手に過剰な反応をしてしまう。 特に、今夜の様な羽毛が舞っているかにも見える、大粒でフカフカとした雪ではなおさらだ。  雪の色や質感が美しさを増した今夜の様な雪は、若葉の気分をそれとは対照的に、より、どす黒いものにさせる。
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