9人が本棚に入れています
本棚に追加
ユキトキヲク
ーー頭の中で、バッハのフーガ、ト短調がパイプオルガンを奏え鳴り響いている。
私がベッドで横になっていると、カーテンのすそから、少しだけ外が見えた。
窓越しには、街灯に照らされた雪達が鮮やかを強め、これ見よがしに自身の存在を主張している。
ーー世界の全てが終りへと向かえば良いのに。今直ぐに。
若葉は、眉間にしわを寄せて、あまりの不快感からそう願った。
若葉は雪を見ると、いつも狂い出しそうになる。
身体中の穴という穴から、まるでウジが湧くような感覚すら覚えてしまう。体と心は身勝手に過剰な反応をしてしまう。
特に、今夜の様な羽毛が舞っているかにも見える、大粒でフカフカとした雪ではなおさらだ。
雪の色や質感が美しさを増した今夜の様な雪は、若葉の気分をそれとは対照的に、より、どす黒いものにさせる。
最初のコメントを投稿しよう!