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寝癖のついたまま僕はサンダルを履いて外へ出る。
今日も歩道を掃く向かいの団地の用務員に会釈する。
去年の秋から彼は決まった時間に同じ場所をひたすら掃除するだけして帰る。それだけなのに作業服はシワだらけだった。
きっと前任が置いていったものに違いない、そう一人納得する。朝からよくも身体が動くもんだ。
この時期のサンダルは冷たい。
サイズが合ってないからか、よく小石が飛び込んでくる。
これがまた厄介なんだ。
寝起きの分際でこういう痛みに敏感なのはなんでだろう。たかが小石だ、アスファルトの欠片だ。
しかし数歩進んで僕は負ける。
脱いだ足に吹き付ける風は容赦なかった。僕はもうサンダルなんか履かない。
コンビニで目当てのものは見つからなかった。でもそこまでで目は覚めてしまった。
さっき来た道を歩く。二つ先の電柱には知らない種類の犬。
先月末に店を閉じた寿司屋。空になったガラスケースが僕の方をじっと見てる。
さっきの団地の前にもうすでに用務員はいなかった。
足も冷たくない。いつの間に。
家を出て、歩きながら夢を見ていたのではないかと思ったがすぐにかき消す。
だって小石が刺さってたように足が痛いし。
景色の羅列が僕を包んでも誰にも言わないまま消えてゆく。特に自分から消す必要もなかった。
夢だとは誰も思わない。
僕は夢の続きだと思ってる。
ただそれだけのことのはず。
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