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めがねをかけた人間の少年と俺が出会ったのは、夕暮れ時の河辺だった。
「何を泣いているのだ」
俺が近づくと少年の顔は泣き過ぎたのか目が赤くなっていた。
ゆっくりとその隣に伏せると俺は独りでに話し出した。
「俺は小さい頃から独りでな……。今となってはそれが普通だが、最初は心細かったものだ」
物思いに耽る俺を、その少年は不思議そうに見つめている。
「虎さんも独りなの?」
少年は小さな声でつぶやく。
「ああ、ずっと独りだ」
気付けば日も落ち、辺りは暗くなり始めていた。
俺はおもむろに立ち上がると少年の服の襟元を無造作に掴み自分の背中へと放り投げた。少年の小さな悲鳴が聞こえる。
「ここは危ない。熊がでるやもしれん。俺の巣に連れて行こう」
小さく、ありがとうと聞こえた気がした。
「少年よ、その手に持っているのはなんだ?」
「これは人形といって、おもちゃみたいなものだよ」
そう言うと、少年は大切そうにその人形を抱きしめた。
おもちゃ?
よくわからないが大切なモノなのだろう。
巣につくと、少年はおなかが空いたという。
「仕方ない、俺が肉をとってこよう」
俺の言葉に少年は目を輝かせた。
「ありがとう」
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