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船は星輪学園が乗っていたものと同じ造りのようだ。
広い甲板に出た途端、潮の香りを含んだ風が全身を打ち付ける。
こうして歩いてくる間にも誰の気配も感じず、俊弥には他に人が乗っているとは思えなかった。
「――さて、これでゆっくり話ができますね」
それまで沈黙を保ち続けていた和真は船首に移動して手すりに背中を預け、くるりと俊弥を振り返った。
一見して、彼は俊弥に対して無防備にしか見えない。
ここに来るまでに、俊弥には幾度となく和真を殺せると思える機会があった。
それを実行しなかったのは彼に聞きたいことが幾つかあったからであり、彼がなぜ自分に興味を示しているのかを単純に知りたかったからでもある。
「まずはそうですね、俊弥さんから僕に聞きたいことがありますよね。何でも質問してください」
親しみを込めて名前を呼ぶ和真に悪びれた様子は全くない。
「俺が意識を失っていたのは、あのブレスレットが原因なのか」
「ええ、そうですよ。あれは身に付けた人間が強力な魔法を受けると目覚め、魔力の流れを止めて意識を奪ってしまうようにプログラムされた、一種の魔法生物みたいなものです。
持ち主に寄生し、外されるまで魔力を糧に生き続ける。少し気持ち悪いですよね」
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