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ここに辿り着くまでの間、船内はあまりにも静かだった。
だが、客室を一つ一つ調べるような真似はしていない。
和真の言葉は、二人にとっては一つの脅しと同じ意味を持っていた。
かなり頭の切れる相手に不利なのは自分達だと俊弥は考え、恭子にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
「恭子。俺達がいなくなったら船の針路を人工島に戻し、船内に人がいないかよく調べてみてくれ」
「ですが、お兄様……」
「心配するな。俺を殺すつもりならいつでもできたはずだ。危害を加える気はないんだろう」
和真の目的はあくまで俊弥にあるようだ。
自ら操縦室から移動すると提案してきたことからもそれは窺える。
「気を付けてくださいね」
「ああ、お前もな。和真と言ったな。彼女はここに残しておく。さっさと移動しよう」
「分かってくれて助かりました。それでは、甲板のほうへ行きましょうか。案内しますよ」
笑顔で歩き出した和真の後を追うように、恭子に全てを任せた俊弥は操縦室を出た。
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