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ジャーナリストの里見は沢山あるダイレクトメールや請求書の中から、一枚の絵葉書に書いてある一文を読んで微笑んだ。
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楽しいレクリエーション施設に
素敵な眺めの個室で快適で、
献身的な介護サービスも利用できます。
手紙をまた書きますね。
母より。
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2050年少子高齢化がすすみ、年金改革の一端として政府が踏み切ったのは『エデン計画』だった。
年金の受給を放棄しない70歳以上の高齢者は『エデン』と言う高齢者専用施設で集団生活をしなければならないと言う物だった。
少額にせざるを得なくなった年金で不安なく老後をすごせるようにと、独居老人の孤独死なども防げると言う目的もあった。
里見の母は半年前に70歳の誕生日を迎え、エデンに行ったのだ。
「何だ、母さん楽しそうじゃないか。あんなに行くの嫌がってたのにな」
里見の母親はエデンに行きたくないから、年金の受給を放棄すると最後まで粘ったのだが、それでは経済的に厳しいと里見も身を切られるような思いで母親に告げたのだった。
沢山あった他の郵便物と一緒に絵葉書をデスクに放り出した里見はタバコをふかし始めて何かが気になってもう一度母親からの絵葉書を読んで、脂汗が吹き出した。
子どもの頃、自分の作ったあいうえお作文を読んで大笑いしていた懐かしい母親の笑顔が浮かんだ。
里見は母親からのたった四行のメッセージを左上から一文字ずつ縦にゆっくりと読んだ。
ーーーーた・す・け・てーーーー
『エデン計画』とは日本政府が公式に行っている残酷な『姥捨山計画』なのである。
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