序章

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初めての平民妃となれば、様々な思惑が働く。 上流階級の者達は、自分の息がかかった者を推すだろうし、また以前は妃候補になれなかった中流階級の者達が、こぞって自分の娘を、と勧めてくるはずだ。 水面下で事が起こるのは間違いない。 それを本当に、平凡なただの娘が妃になってしまえば、その次以降の妃選びに周りは関与しづらくなる。 どんな身分の者でも妃になれる時代が来る。 ――平等な世の中が来る それを、悠謐は狙っているのだ。 又、淞淋以降の王が、自身の想い人と結婚しやすい環境をつくってやることにもなる。 そして、もしかしたら、その更に百歩先のことも考えているのかもしれない。 ――「女」王が立たる日がやってくるという時を 悠謐は、その人柄故にだけではない。改革を進め、この太汀国に新たな時代を呼んだ名君としても慕われていた。 その明晰さをもって、彼は太汀国をここまで導いてきた。 珀千は、悠謐の意図するところに気付いてしまった。 彼もまた聡明であった。 そして、悠謐の善き理解者でもあった。
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