序章

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「否定はできない」 やや心苦しそうに悠謐が答えると、珀千も悲しく頷いた。 「わかりました。そこまで仰るのでしたら、応じましょう」 許嫁を定めるのに必要なものを、宮殿に取りに行っていた蒼内官からそれらを受け取り、書をしたためる。 「英華嬢、淞淋。こちらへきなさい」 それまで蚊帳の外であった当人たちを呼ぶと、悠謐は彼らの親指に朱肉をつけ、文書の最後にそれぞれ捺させた。 これで、許嫁は定まった。 「珀千。」 「はい」 「そなたらを王家に巻き込んだことは、すまなく思う」 「はい」 「だが、そなたと親戚になれたのは嬉しく思うぞ」 「畏れ多いことにございます」 珀千は孫の未来を案じながらも、悠謐に微笑みを向けた。 ――願わくは、どうか、英華と淞淋皇太孫殿下の未来に、幸多からんことを
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