序章

5/12
前へ
/23ページ
次へ
しばらくすると、淞淋を連れて五十代半ばの柔和そうな宮内官<クナイカン>(皇室の庶務にあたる者)がやって来た。 「蒼内官<ソウ ナイカン>、悪いがしばらくの間、こちらの英華嬢と淞淋を一緒に遊ばせてやってくれ」 「かしこまりました」 やって来た内官、蒼愁<ソウ シュウ>は礼をすると、すぐに二人を連れて、どこかへと消えていった。 珀千は、そんな三人を不安に見送りながらも悠謐に向き合った。 「陛下、よろしかったので?」 「私が構わぬと言ったのだ。良い。」 ならば仕方ない。蒼内官には悪いが、お転婆娘の相手になってもらうしかない。 ああ見えて、あの娘はお転婆なのだ。それで、家族はいつも手を焼いているのだが……。 珀千は心の中でだけ蒼内官に同情しつつ、再び鋏を手に取った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加