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しばらくすると、淞淋を連れて五十代半ばの柔和そうな宮内官<クナイカン>(皇室の庶務にあたる者)がやって来た。
「蒼内官<ソウ ナイカン>、悪いがしばらくの間、こちらの英華嬢と淞淋を一緒に遊ばせてやってくれ」
「かしこまりました」
やって来た内官、蒼愁<ソウ シュウ>は礼をすると、すぐに二人を連れて、どこかへと消えていった。
珀千は、そんな三人を不安に見送りながらも悠謐に向き合った。
「陛下、よろしかったので?」
「私が構わぬと言ったのだ。良い。」
ならば仕方ない。蒼内官には悪いが、お転婆娘の相手になってもらうしかない。
ああ見えて、あの娘はお転婆なのだ。それで、家族はいつも手を焼いているのだが……。
珀千は心の中でだけ蒼内官に同情しつつ、再び鋏を手に取った。
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